2026年3月18日の春闘集中回答日に、三菱重工業は月1万6,000円の賃金改善と年間約283万円(6.7カ月)の一時金で満額回答した。年収増加率は4年連続で7%以上になったと報じられている(マイナビニュース、2026年3月18日)。
防衛や発電機器の受注が好調で、重工・機械メーカーの待遇は上向いている。では「残業込みで1時間あたりいくら稼げるのか」で見ると、機械メーカーはどうなのか。
TimeValueが有価証券報告書のデータから推計した上場機械メーカー97社の実質時給で確かめる。
※本記事の実質時給・TEIは、有価証券報告書の平均年収と平均残業時間から算出した推計値です(データ最終更新:2026年8月)。
機械業界の実質時給は高い?——業界平均は¥3,464で「中位」
機械業界の平均実質時給は¥3,464で、上場企業の業界別ランキングでは中位に入る。平均残業は月15.7h、平均年齢は42.4歳、業界TEIは81.7だ。
近い業界と並べると、機械はほかのメーカー系業種とほぼ同じ位置にいることがわかる。
| 業種 | 社数 | 平均実質時給 | 平均残業/月 | 業界TEI |
|---|---|---|---|---|
| 精密機器 | 18社 | ¥3,565 | 13.5h | 85.5 |
| 電気機器 | 119社 | ¥3,490 | 15.4h | 80.9 |
| 機械 | 97社 | ¥3,464 | 15.7h | 81.7 |
| 化学 | 96社 | ¥3,452 | 12.8h | 81.5 |
| 輸送用機器 | 54社 | ¥3,244 | 18.1h | 76.4 |
業界平均だけを見ると、機械は「特に得でも損でもない業界」だ。海運業(¥7,030)や医薬品(¥4,361)のような高時給業界ではないし、小売業(¥2,569)ほど低くもない。
ただ、平均の裏には大きなばらつきがある。同じ機械メーカーでも、上位は¥7,016、下位は¥2,021まで開いている。業界で選ぶより、会社で選ぶほうが時給への影響は大きい。
機械メーカーで実質時給が高いのはどこ?——TOP10ランキング
1位はディスコの¥7,016、2位は三井海洋開発の¥5,918だ。3位から10位までは、実質時給¥4,205〜¥4,711の間に企業が並ぶ。
| 順位 | 企業名 | 平均年収 | 残業/月 | 実質時給 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | ディスコ | 1880万円 | 50.6h | ¥7,016 |
| 2 | 三井海洋開発 | 1196万円 | 6.7h | ¥5,918 |
| 3 | 巴工業 | 953万円 | 6.8h | ¥4,711 |
| 4 | マックス | 1000万円 | 14.5h | ¥4,679 |
| 5 | 栗田工業 | 1002万円 | 15.6h | ¥4,650 |
| 6 | 三菱重工業 | 1072万円 | 26.4h | ¥4,631 |
| 7 | IHI | 1001万円 | 21.3h | ¥4,468 |
| 8 | 荏原製作所 | 980万円 | 23.7h | ¥4,308 |
| 9 | 三共 | 932万円 | 18.7h | ¥4,235 |
| 10 | 理想科学工業 | 852万円 | 7.1h | ¥4,205 |
ディスコは半導体の切断・研削・研磨装置のメーカーで、年収1880万円は機械業界で群を抜いている。月50.6hと残業は多いものの、年収の高さがそれを上回って首位に立つ。
2位の三井海洋開発は、海洋の石油・ガス生産設備を手がける会社だ。年収1196万円に対して残業は月6.7hと短い。高い年収と短い残業がそろった、時給のコスパが最も良いタイプと言える。
なお、小松製作所(902万円)やDMG森精機(905万円)は年収では上位だが、有価証券報告書に残業時間の記載がないため、このランキングからは外している。
なぜ三菱重工業は年収が高いのに時給6位なのか?
答えは残業時間だ。三菱重工業の月平均残業は26.4hで、ディスコを除くとTOP10の中で最も長い。年収1072万円は上位の中でも高いが、労働時間が長いぶん実質時給は¥4,631にとどまる。
年収の順と時給の順を並べると、ずれがはっきり見える。
- 三菱重工業:年収1072万円・月26.4h → ¥4,631
- マックス:年収1000万円・月14.5h → ¥4,679
- 巴工業:年収953万円・月6.8h → ¥4,711
年収では三菱重工業が一番上なのに、時給では3社の中で一番下になる。巴工業は年収が低めでも、残業が月6.8hと短いので時給で上回る。
冒頭の春闘ニュースのとおり、三菱重工業は賃上げを続けている。ただ、年収が上がっても残業が長いままなら、時給の伸びは年収の伸びほど大きくならない。転職先として見るなら、配属先の残業の実態まで確かめておきたい。
年収が同じでも時給が違う?——IHIと栗田工業の比較
年収がほぼ同じなら、残業の短い会社のほうが時給は高くなる。 IHIと栗田工業はそのわかりやすい例だ。
| 企業名 | 平均年収 | 残業/月 | 実質時給 | TEI |
|---|---|---|---|---|
| 栗田工業 | 1002万円 | 15.6h | ¥4,650 | 107.4 |
| IHI | 1001万円 | 21.3h | ¥4,468 | 105.4 |
年収はどちらも1000万円台前半でほぼ同じだが、残業はIHIが月21.3h、栗田工業が月15.6hだ。この残業の差が、そのまま時給の差になって表れている。
水処理の栗田工業と、航空エンジンや資源・エネルギーのIHIでは事業も職種も違う。それでも「年収が同じなら残業の少ないほうが時給で得」という原則は変わらない。求人票の年収だけを見て比べると、この差は見えてこない。
同じ見方でいうと、空調大手のダイキン工業は年収896万円・月17.7hで¥4,102、荏原製作所は年収980万円・月23.7hで¥4,308だ。どちらも年収・時給ともに業界平均の¥3,464を大きく上回っている。
機械メーカーで時給が低いのはどんな会社?
業界の下位では、実質時給が業界平均の¥3,464を大きく下回る。最も低いニッチツは年収466万円・月25.6hで¥2,021、次の赤阪鐵工所は年収524万円・月11.3hで¥2,510だ。
下位20社の年収は466万円から678万円で、上位の会社とは年収の水準がまったく違う。残業の長さはまちまちで、月8hの会社もあれば月25.6hの会社もある。下位では、残業より年収の低さが時給を下げている。
つまり機械業界では、上位は「残業の長さ」で、下位は「年収の水準」で時給の差がつく。自分が比べたい会社がどちらのタイプかを意識すると、判断を誤りにくい。
機械メーカーへの転職で時給を落とさないためのチェックポイント
機械メーカーへの転職や就職を考えるなら、次の順に確認すると時給で損をしにくい。
- 年収と月平均残業をセットで見る:年収1000万円前後の会社でも、残業が月15.6hか月26.4hかで時給は変わる。
- 業界平均の¥3,464と比べる:それを下回る会社は、年収がそこそこでも時給のコスパは低い。
- 残業データがない会社は慎重に:コマツのように残業の記載がない会社は、面接や口コミで実際の残業を確かめる。
- TEIもあわせて見る:年齢に対して効率よく稼げるかを示すTEIは、業界平均が81.7。三菱重工業は109.5、三井海洋開発は141.9だ。
TEIの考え方はTEI(タイム効率指数)の解説記事で、残業と年収の関係は年収アップと残業増加の損益分岐点で詳しく説明している。
まとめ:機械メーカーは「年収」より「残業」で選ぶと時給が上がる
- 機械業界(上場97社)の平均実質時給は¥3,464で、上場企業の中では中位。
- 1位はディスコの¥7,016、2位は三井海洋開発の¥5,918。
- 三菱重工業は年収1072万円でも、月26.4hの残業で実質時給は¥4,631。
- 年収がほぼ同じIHIと栗田工業では、残業の短い栗田工業のほうが時給は高い。
機械業界は業界平均だけ見ると平凡だが、会社ごとの差は大きい。年収の高さだけで選ばず、残業時間まで含めた実質時給で比べてほしい。
ほかのメーカー系業界との比較は製造業の業種別ランキング、電気機器業界のランキング、自動車業界のランキングも参考になる。気になる会社の実質時給はTimeValueの時給ランキングで、新卒向けの比較は新卒向けページで確認できる。
注:実質時給は「年収 ÷(月所定労働時間×12 + 月平均残業時間×1.25×12)」で算出した推計値。上場4,026社のEDINET開示データ(2026年8月更新)のうち、持株会社と残業データの無い企業を除いた対象企業1,399社で集計した。有価証券報告書の数値は提出会社(単体)のもので、職種や配属先によって実際の時給は異なる。