建設業2024年問題残業時間実質時給転職TEI

建設業の実質時給¥3,766・月残業10.6時間の実態|「2024年問題」2年後、上場154社の有報データで転職コスパを判定

11分
結論(要約)

建設業の2024年問題(時間外労働上限規制)施行から2年以上が経過した2026年現在も、上場154社の有報データ(2026年4月更新)では月平均残業10.6時間と全業種2位の長さが続く。実質時給¥3,766は全28業種中9位だが、TEIは87.2と下位圏。不動産業(¥3,864・残業3.0h)への転職では時給と残業が同時に改善する。建設業内の個社差は大きく、TimeValueのランキングで個別企業の実質時給・TEIを確認したうえで判断することが転職コスパ最大化の鉄則。

この記事のポイント
  • 1建設業の実質時給は¥3,766(全28業種中9位)だが、月残業10.6時間は全業種2位の長さ。残業の多さが時給を押し下げ、同水準の年収でも不動産業(¥3,864)に実質時給で劣る。
  • 2「2024年問題」(時間外労働上限規制、2024年4月施行)から2年以上が経過した2026年も、上場154社の有報データ(2026年4月)では月残業10.6時間と改善が限定的。
  • 3建設業のTEI(タイム効率指数)は87.2で全業種下位圏。業界平均年齢43.2歳と組織が高齢化しており、若手の「今の時給」は業界平均より低い水準になりやすい。
  • 4転職先として不動産業(+¥98/時・月残業−7.6h)、銀行業(+¥87/時・月残業−5.1h)は時給改善と残業削減を同時に実現できる現実的な選択肢。
  • 5「建設業=残業が多い」のは工期プレッシャー・技術者不足・受注型ビジネス構造という5つの構造要因によるもの。制度だけでは短期的な解決が難しい。
目次
  1. 01建設業の実質時給¥3,766は全業種9位——残業の多さが時給を押し下げている
  2. 02「2024年問題」後の残業実態——有報データでは10.6時間/月が続く
  3. 03なぜ建設業は残業が多いのか——5つの構造的な理由
  4. 04TEI 87.2が示す「建設業は若手コスパが低い」現実
  5. 05建設業内の企業差を確認する——業界平均は「目安」に過ぎない
  6. 06建設業から他業種への転職コスパ比較
  7. 07まとめ——建設業の転職コスパを判断する4つのチェックポイント

2025年度、建設費の高騰と深刻な人手不足を背景として、大規模建設プロジェクトの中止や延期が相次いで発表された。リニア中央新幹線・再開発事業・公共インフラ整備——あちこちで「工期延期」「計画見直し」の報が続いた(出所:国土交通省・建設施工部会、2026年白書)。そしてその根底にあるのが、2024年4月に施行された「2024年問題」——建設業への時間外労働の上限規制だ。

「規制が入ったのに、なぜ現場の残業は減らないのか?」——ゼネコン・建設コンサルで働く人、または転職を検討する人なら誰もがこの疑問を抱いているはずだ。

答えから言おう。TimeValueが上場154社の有価証券報告書(EDINET開示)から算出したデータ(2026年4月更新)では、建設業の月平均残業時間は10.6時間と、全28業種中2位の長さが続いている。「2024年問題」の施行から2年以上が経過した現在も、残業の抜本的な改善は有報データには現れていない。

本記事では、このデータを軸に「建設業の転職コスパ」を有報データで正確に判定する。


建設業の実質時給¥3,766は全業種9位——残業の多さが時給を押し下げている

結論:年収水準は上位圏だが、月残業10.6時間が実質時給を2桁順位に留める

TimeValueが上場企業4,003社の有価証券報告書から算出した業界別の実質時給ランキング(データ最終更新2026年4月)で、建設業は154社を対象として平均実質時給**¥3,766/時・月平均残業10.6時間**を記録している。

順位 業種 社数 平均実質時給 平均残業/月 業界TEI
1 海運業 11 ¥5,265 4.7h 131.8
2 証券、商品先物取引業 36 ¥4,935 3.1h 114.0
3 保険業 13 ¥4,520 7.6h 105.1
4 鉱業 5 ¥4,311 8.7h 102.0
5 医薬品 80 ¥4,240 3.9h 95.1
6 石油・石炭製品 10 ¥4,159 5.2h 94.5
7 不動産業 141 ¥3,864 3.0h 98.4
8 銀行業 78 ¥3,853 5.5h 91.2
9 建設業 154 ¥3,766 10.6h 87.2
10 電気・ガス業 28 ¥3,734 10.9h 88.6
情報・通信業 ¥3,461
サービス業 561 ¥3,108 4.5h 80.0
小売業 320 ¥2,834 4.8h 68.2

※上場4,003社・有価証券報告書データ(2026年4月更新)。各業界3社以上が対象。TimeValue推計値。

注目すべきは残業時間の順位だ。建設業の月残業10.6時間は全業種で2番目に長い(1位は電気・ガス業の10.9時間)。

ここで、実質時給が近い不動産業(¥3,864・月残業3.0時間)との差を比べてみよう。

  • 実質時給の差:不動産業は建設業より¥98/時高い
  • 残業の差:不動産業は建設業より月7.6時間短い
  • 年間換算:月7.6時間×12ヶ月=年間91時間の労働時間差
  • 金額換算:年収700万円で月残業が7.6時間減ると、年間の実質コスト差は約33万円相当

同じ「建設・不動産」分野のキャリアパスでも、従事する業種が変わるだけで、年間100時間近い労働時間と30万円超のコスパ差が生じうる。


「2024年問題」後の残業実態——有報データでは10.6時間/月が続く

結論:上限規制施行2年後も、月残業10.6時間は全業種2位の長さを維持

建設業への時間外労働の上限規制(原則:月45時間・年360時間、特例:月100時間未満・年720時間)は、2024年4月から施行された。いわゆる「2024年問題」だ。製造業・小売業などには先行して2019年に適用されていたが、建設業・運輸・医師には5年の猶予期間が与えられ、2024年4月にその期限を迎えた。

TimeValueが集計した上場建設業154社の有報データ(2026年4月更新)では、月平均残業は10.6時間。厚生労働省「勤労統計調査」(2024年平均・速報値、2025年2月公表)では建設業の所定外労働時間は月12.7時間と報告されており、上場企業(管理職除外)の方が若干低い数値だが、いずれも2桁台が続いている。

なぜ施行2年後も残業が10時間超なのか。背景には、制度の変更だけでは短期間に解決しにくい構造的な問題がある。


なぜ建設業は残業が多いのか——5つの構造的な理由

結論:「工期の締め切り」「技術者不足」「受注型の力関係」が重なる複合要因

理由1:工期は天候・設計変更で容易に崩れる

建設工事は契約で工期が定まっている。だが現場では、悪天候・資材の遅延・設計変更が頻繁に発生する。これらは工期短縮の余地を奪い、そのしわ寄せは現場の労働時間に集中する。「残業で帳尻を合わせる」構造が現場文化として根付いており、法律の上限規制だけでは即座に変わりにくい。

理由2:有資格者に業務が集中する

建設現場では、施工管理技士・建築士・土木技術者などの有資格者が「監督者」として多くの業務をこなす必要がある。業界全体で技術者の高齢化と新規入職者の減少が続いており、一人の有資格者が受け持つ案件数・責任範囲が増加しやすい構造だ。

理由3:土日・深夜工事を避けられない工種がある

道路・鉄道・公共インフラの改修工事では、日中の交通への影響を最小化するため土日・深夜作業が必須なケースが多い。これらは割増賃金の対象だが、同時に月45時間という上限を侵食する要因にもなる。

理由4:受注型ビジネスで「断れない」

建設業の多くは発注者(施主)→元請けゼネコン→下請け専門工事業という多層構造で動く。上位から降りてくる工期短縮要求・仕様変更を下位の事業者が断りにくい構造的な「力関係の非対称性」がある。上流の発注慣行が変わらない限り、下流の残業削減には限界がある。

理由5:2026年は「ごまかしが効かなくなった年」

建設採用相談室(2026年)は「2024年問題の施行が進み、2026年は規制対応の"ごまかし"が効かなくなった年」と指摘する。大規模プロジェクトの中止・延期が相次ぐのは、規制遵守を優先した結果でもある。構造変革が本格化するのは2027年以降とみられており、残業削減が有報データに反映されるのは早くても2028年度になりそうだ。


TEI 87.2が示す「建設業は若手コスパが低い」現実

結論:業界平均年齢43.2歳で高齢化が進み、若手の今の時給は業界平均を下回りやすい

TEI(タイム効率指数)=実質時給 ÷ 平均年齢。TimeValueが独自に算出する、「今の年齢でどれだけ効率よく稼げるか」を示す指標だ。建設業のTEIは87.2で、全上場企業の業界別ランキングでは下位圏に位置する。

業種 業界TEI 実質時給 平均年齢
海運業 131.8 ¥5,265 40.0歳
証券業 114.0 ¥4,935 43.3歳
不動産業 98.4 ¥3,864 39.3歳
銀行業 91.2 ¥3,853 42.2歳
電気・ガス業 88.6 ¥3,734 42.1歳
建設業 87.2 ¥3,766 43.2歳
サービス業 80.0 ¥3,108 38.9歳
小売業 68.2 ¥2,834 41.6歳

建設業のTEI 87.2は「建設業の平均年齢(43.2歳)で実質時給¥3,766を得ている」を意味する。

比べてほしいのは不動産業(TEI 98.4)だ。実質時給は¥98/時しか差がないが、平均年齢は39.3歳と建設業より4歳若い。これはTEIの差(87.2 vs 98.4)に直結している。

20代・30代の転職者にとって重要なのは、「40代以降にその実質時給に達する会社」より「30代のうちからその実質時給を得られる会社」だ。TEIの高低はその差を端的に示す。建設業は同水準の実質時給を「より高い年齢層で実現している」傾向があり、若手には不利に働く。


建設業内の企業差を確認する——業界平均は「目安」に過ぎない

結論:154社の中には月残業5時間以下・TEI高位の企業も存在する

業界平均のTEI 87.2・月残業10.6時間はあくまで154社の「平均」だ。建設業の中でも、スーパーゼネコン・ハウスメーカー・建設コンサルタント・専門工事業では、ビジネスモデルと雇用条件が大きく異なる。

建設コンサルタントは設計・調査が主業務で現場の工程プレッシャーを受けにくい。ハウスメーカーは戸建て中心でプロジェクトが小ロットかつ反復的なため、工程管理が安定しやすい。これらの業態は、総合建設(ゼネコン)より月間残業が短くなりやすい構造だ。

TimeValueの時給ランキングでは、建設業154社のうち個社の実質時給・残業時間・TEIを横断的に比較できる。業界平均より実質時給が高く残業が少ない企業を選ぶことで、建設業の中でもコスパ上位のキャリアを確保できる。


建設業から他業種への転職コスパ比較

結論:不動産業・銀行業は「時給アップ+残業削減」を同時に実現できる現実的な選択肢

建設業から転職する場合の主要な比較先を、実質時給と残業時間の2軸で整理した。

転職先 実質時給 月残業 建設業との時給差 月残業変化
不動産業 ¥3,864 3.0h +¥98 −7.6h
銀行業 ¥3,853 5.5h +¥87 −5.1h
情報・通信業 ¥3,461 −¥305
電気・ガス業 ¥3,734 10.9h −¥32 +0.3h
サービス業 ¥3,108 4.5h −¥658 −6.1h
建設業(現職) ¥3,766 10.6h ± 0 ± 0

不動産業への転職は、時給と残業の両面でコスパが改善するケースだ。実質時給が¥98/時上がり、月残業が7.6時間短縮される。年間換算すると労働時間が約91時間(約11日分)減り、時給差は年間約20万円の実質差になる。建設施工管理・設備管理のスキルはプロパティマネジメント・ビル管理・不動産開発の職種に直接活かせるため、スキルの持ち越しも高い。

銀行業への転職もコスパ改善になりうる。実質時給¥87/時アップ・月残業−5.1時間と、不動産業に次ぐ改善幅だ。ただし銀行業には日銀利上げ局面(2025年12月・政策金利0.75%に引き上げ)による業績回復という追い風があり、今後の処遇改善期待も含めて考えると長期的なコスパ軸で評価できる。

**情報・通信業(IT転職)**は実質時給では建設業を下回るが、BIM・建設DX・GIS・インフラ管理システムなどに関わる建設系エンジニアが転職する場合、個社差が非常に大きいため一概には言えない。IT転職先の個社の実質時給をTimeValueで確認してから判断することが重要だ(業界平均¥3,461 vs 個社首位の光通信¥12,545——差は3.6倍)。


まとめ——建設業の転職コスパを判断する4つのチェックポイント

確認事項 建設業の実態(2026年4月データ) 判断基準
業界実質時給 ¥3,766(全28業種中9位) 業界平均は上位だが残業で補正が重い
月平均残業時間 10.6時間(全業種2位の長さ) 2024年問題後も高水準が続く
業界TEI 87.2(下位圏) 若手の今の時給効率が低い構造
対象社数と個社差 154社・個社差が大 業界平均より個社の実値が重要

建設業の実質時給¥3,766は全28業種中9位と業界平均(¥3,461)を上回る。しかし月残業10.6時間という全業種2位の長さがそのコスパを大きく損ない、TEI 87.2という低水準(若手不利)を生み出している。「2024年問題」施行から2年を経た2026年現在、有報データに抜本的な改善は見えていない。

転職・就活における建設業の判断は、業界平均で見切らず、個社の実質時給・残業・TEIをTimeValueの時給ランキングで確認してから行うのが鉄則だ。残業が少なくTEIが業界平均(87.2)を上回る企業であれば、業界内でもコスパ上位のキャリアを確保できる。

並行して不動産業・銀行業との比較も行うことで、「建設業にとどまるか・転職先を変えるか」の判断をデータで下せる。新卒・第二新卒の方は新卒ランキングで初任給ベースの時給も確認してほしい。関連記事として転職で年収100万円アップが損になるケースTEIで転職コスパを測る方法もあわせて読むと、建設業の転職判断に必要な3軸(実質時給・残業・TEI)をより深く理解できる。

本記事の実質時給・TEI・月平均残業時間・社数は、EDINETに開示された有価証券報告書のデータを基にTimeValueが算出した推計値です(対象4,003社のうち建設業154社、データ最終更新2026年4月)。厚生労働省「勤労統計調査」(2024年平均・速報値)は2025年2月公表データを引用しています。国土交通省建設施工部会の動向は2026年白書・公表資料に基づきます。個別企業の判断に際しては最新の開示情報もご確認ください。

よくある質問

Q. 建設業の2024年問題で残業時間は実際に減りましたか?
上場154社の有価証券報告書データ(2026年4月更新)では、建設業の月平均残業時間は10.6時間で、全業種中2位の長さが続いています。厚生労働省「勤労統計調査」の2024年平均では12.7時間/月(速報値)と報告されており、大企業(上場)では管理職を除いた数値が低くなる傾向はあるものの、10時間超が続いています。「2024年問題」の制度は施行されましたが、工期プレッシャーや技術者不足という構造要因は短期間では解消されず、残業削減の効果が本格的に数値に表れるのは2027年以降とみられます。
Q. 建設業と不動産業はどう違うのですか?転職で時給は変わりますか?
建設業(上場154社)は実質時給¥3,766・月残業10.6時間であるのに対し、不動産業(上場141社)は¥3,864・月残業3.0時間です。同じ「不動産・建設」分野でもデータ上は別業種として集計されており、残業時間の差は月7.6時間(年間91時間相当)、時給差は¥98/時(年間約2万円の実質差)あります。建設施工管理・設備管理のスキルは不動産業(プロパティマネジメント・ビル管理・建設コンサルタント)への転職に活かしやすく、コスパ改善と残業削減を同時に狙えるキャリアパスとして注目されています。
Q. 建設業に転職するメリットはありますか?デメリットばかりですか?
業界全体では残業が多くTEIが低い点がデメリットですが、建設業内の個社差は非常に大きいです。154社の中には月残業が5時間以下で実質時給が業界平均を大幅に上回る企業も存在します。特に総合建設(スーパーゼネコン・大手ゼネコン)と専門工事業・ハウスメーカー・建設コンサルでは労働条件が大きく異なります。業界平均のデータで判断するのではなく、TimeValueの時給ランキング(/#ranking)で個別企業の実質時給・残業時間・TEIを確認してから判断することが重要です。
Q. ゼネコンへの転職を考えています。何を見て比較すればいいですか?
3点確認することを推奨します。①有価証券報告書(EDINET)の「従業員の状況」欄で月間平均残業時間を確認する。②TimeValueの時給ランキングで実質時給とTEIを業界平均(¥3,766・TEI 87.2)と比較する。③転職後の想定残業時間と提示年収で実質時給を試算する(年収÷(月所定時間+残業×1.25)÷12)。業界平均よりTEIが高い企業は、若手でもコスパよく稼げる組織構造を持っている可能性があります。

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