精密機器大手のオリンパスが2026年5月12日に公表した2026年3月期の決算短信では、売上収益が1兆106億円と1兆円を超えた一方、営業利益は前期比40.2%減の971億円だった(オリンパス 2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)、2026年5月12日)。
平均年収1006万円という数字は転職先として魅力的だが、残業時間まで込みで「実質時給」はどれほどになるのか。
精密機器業界には、医療機器(テルモ・ニプロ)、光学機器(ニコン・タムロン)、分析・計測(島津製作所・東京精密)、時計(シチズン時計)と幅広いカテゴリの企業が含まれる。年収だけ見ると近い水準に並ぶが、残業時間が違えば時給の格差は一気に広がる。
有価証券報告書の平均年収と、厚生労働省「女性の活躍推進企業データベース」等が公表する平均残業時間から算出した実質時給(推計値)で、上場18社の実力を比較した。
精密機器業界 実質時給ランキング TOP9
上場企業4,026社のうち精密機器は18社が対象(データ最終更新:2026年8月7日)。業界全体の平均実質時給は¥3,565、平均残業は月13.5h、業界TEIは85.5で、32業種中11位に位置する。
| # | 企業名 | 平均年収 | 残業/月 | 実質時給 | TEI |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | ノーリツ鋼機 | 987万円 | 7.7h | ¥4,847 | 117.6 |
| 2 | オリンパス | 1006万円 | 19.6h | ¥4,542 | 103 |
| 3 | 島津製作所 | 924万円 | 8.5h | ¥4,513 | 102.8 |
| 4 | ニコン | 799万円 | 6.1h | ¥3,972 | 94.8 |
| 5 | マニー | 786万円 | 5.4h | ¥3,930 | 93.6 |
| 6 | シチズン時計 | 789万円 | 9.1h | ¥3,839 | 87.4 |
| 7 | タムロン | 828万円 | 16.5h | ¥3,820 | 88.2 |
| 8 | テルモ | 822万円 | 20h | ¥3,701 | 91.8 |
| 9 | 東京精密 | 828万円 | 22.7h | ¥3,661 | 95.1 |
※残業時間は厚生労働省「女性の活躍推進企業データベース」または各社の公式開示値。実質時給は推計値。
最高のノーリツ鋼機(¥4,847)と最低の北里コーポレーション(¥2,259)では¥2,588の開きがある。業界平均¥3,565から上下に大きく振れる業界であることがわかる。
なぜノーリツ鋼機と島津製作所の時給が高いのか
1位のノーリツ鋼機は、平均年収987万円でオリンパス(1006万円)を下回る。にもかかわらず月残業7.7hの少なさが功を奏し、実質時給¥4,847で業界トップに立つ。
3位の島津製作所(分析・計測機器)は平均年収924万円。オリンパスより82万円(1006万円 − 924万円)少ないが、月残業8.5hはオリンパス(19.6h)より11.1h少ない。その結果、時給はオリンパス¥4,542 vs 島津¥4,513と¥29しか差がない。年収を82万円上乗せしても、残業11.1hの差によって時給換算ではほぼ横並びになる構造だ。
これが「年収を上げるために残業が増えると、時給では割に合わない」ことの典型例だ。
残業が少なくても時給は上位:ニコンとマニー
4位のニコン(光学機器)は月残業6.1h・時給¥3,972。5位のマニー(医療用針・外科縫合材)は月残業5.4h・時給¥3,930。マニーの5.4hは18社で最も少なく、ニコンの6.1hは長野計器(6h)に次ぐ3番目の少なさだ。それでも時給は上位5社に入る。
マニー(¥3,930)とテルモ(¥3,701)は年収が近く(786万円 vs 822万円)、差は36万円しかない。だが月残業はマニー5.4h・テルモ20hと14.6hの差があり、時給は¥229開く(¥3,930 − ¥3,701)。知名度は低くても、時給ベースで比べるとマニーのコスパは際立っている。
月残業20h以上の企業は何が違うのか
8位のテルモ(月20h・¥3,701)と9位の東京精密(月22.7h・¥3,661)は、年収が820〜828万円と高いにもかかわらず時給は中位にとどまる。残業が長い分だけ分母の「働いた時間」が増えるため、年収を時給に換算したときに薄まる。
テルモは国内最大手の医療機器メーカーとして安定性や業界での知名度は高く、長く働くことを前提としたキャリア設計には合っている。一方で「時間あたりのリターン」を最優先にするなら、残業が少なく時給が高い企業との比較が必要だ。
業界の中での立ち位置
精密機器(¥3,565)は、電気機器(¥3,490)・機械(¥3,464)・化学(¥3,452)より高く、製造業の中では上位グループだ。ただし医薬品(¥4,361・3位)や不動産(¥4,076・4位)と比べると依然差がある。
「技術職でありつつコスパも重視したい」という転職検討者にとって、精密機器は選択肢になりうる業界だ。問題は「業界全体」の平均値で判断してしまうと、残業の多い企業と少ない企業を区別できない点にある。
まとめ:精密機器への転職で確認すべき3点
- 残業時間は有価証券報告書の義務情報ではない:この記事の残業時間は、厚生労働省「女性の活躍推進企業データベース」等で企業が公表した値。推計値なのは、年収と残業時間から算出した実質時給の方だ。残業時間は監査を受けた値ではないため、公表の精度は企業により異なる。年収出典:有価証券報告書、残業出典:女性の活躍推進企業データベース等。
- 年収が近い企業でも時給で¥229の差が出る:マニー(年収786万円・¥3,930)とテルモ(年収822万円・¥3,701)のように、年収差36万円(822万円 − 786万円)でも時給差は¥229ある。転職先を比べるときは年収だけでなく残業時間をセットで確認することが重要だ。
- 4,026社を網羅した横断比較は実質時給ランキングで:精密機器以外の業界との比較や新卒・第二新卒向けの情報は新卒向けページも参考にしてほしい。
本記事の実質時給・TEIは推計値です。平均年収の出典は各社の有価証券報告書、平均残業時間の出典は厚生労働省「女性の活躍推進企業データベース」または各社の公式開示。残業時間は有価証券報告書の記載義務項目ではなく、監査済みの値でもありません。データ最終更新:2026年8月7日。