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異業種転職で実質時給はいくら上がるか?上場4,026社データで見る「コスパの良い転換ルート」2026年秋版

/ 読了 9分

結論(要約)

マイナビの調査では約7割が「年収が下がる転職は受け入れられない」と答えている(2026年9月24日公表)。ただ、年収が上がっても残業が増えれば実質時給は下がる。上場4,026社の有報データで業界平均を比べると、小売業¥2,569から医薬品¥4,361への転換で+¥1,792/h、年間約358万円の差になる。転職先は年収の増加幅ではなく、実質時給の差と残業時間で選ぶのが正解だ。

この記事のポイント
  1. 1業界平均の実質時給は、対象企業が20社以上ある業種では、小売業¥2,569〜医薬品¥4,361で約1.7倍の差。年間2,000時間換算で約358万円になる。
  2. 2海運業は¥7,030と突出するが、残業データを開示する対象企業は4社だけ。転職先の現実的な候補としては医薬品・不動産・建設が上位に来る。
  3. 3高時給業種の残業は月13〜14時間台で、全業種の中では中位。高時給の理由は残業の短さではなく年収水準の高さにある。
  4. 4同じ年収700万円の転職でも、転職先の業種平均残業(月10〜20時間)の違いで時給は¥237/h、年間約47万円変わる。
  5. 5業界平均は入口の目安。個社では業界平均の約2倍もある(情報・通信業のジャストシステム¥6,211 vs 業界平均¥3,177)。業種で絞り、時給ランキングで個社を確認する。
目次
  1. 01「年収が上がった=コスパが上がった」とは限らない理由
  2. 02業種別の実質時給ランキング:どの業種に転職すれば時給が上がるか
  3. 03業種別「転換前後の時給変化」シミュレーション
  4. 04異業種転職で実質時給を上げる3つの確認ポイント
  5. 05まとめ:異業種転職の実質時給チェックリスト

2026年9月24日、マイナビが「転職活動実態調査(2026年)」を公表した。転職活動をした人の27.9%が主な動機に「給与」を挙げ、約7割が「年収が下がる転職は受け入れられない」と答えている(出所:マイナビ、2026年9月24日)。

同社の「転職動向調査2026年版」(2026年3月23日公表)によると、2025年の正社員の転職率は7.6%で、調査開始以降最高だった。転職後の平均年収は533.7万円で、転職前より19.2万円増えている。

ただ、年収が増えても残業が増えれば、1時間あたりの稼ぎ(実質時給)は下がることがある。TimeValueでは上場企業4,026社の有価証券報告書(EDINET開示、データ最終更新2026年8月)から実質時給を算出している。このデータで「業種を変えると時給がいくら変わるか」を検証する。


「年収が上がった=コスパが上がった」とは限らない理由

結論:業種によって残業時間が約2.7倍違い、年収だけ比べても実態は見えない

異業種転職で見落としやすいのが残業時間の違いだ。業界平均の月残業は、繊維製品の7.8時間から陸運業の21.4時間まで約2.7倍の開きがある。年収が上がっても残業が増えれば、時給の改善は小さくなる。

次の例はどれも「年収600万円・月残業10時間(時給約¥2,899)から、年収700万円になった転職」だ。転職先の残業は、その業種の平均で計算している。

転職先の業種 年収 月残業(業界平均) 推計実質時給 前職比
銀行業 700万円 10.0時間 約¥3,382/h +約¥483/h
不動産業 700万円 13.7時間 約¥3,293/h +約¥394/h
建設業 700万円 20.4時間 約¥3,145/h +約¥246/h

同じ年収700万円への転職でも、残業の差で時給は¥237/h変わる。年間2,000時間で換算すると約47万円だ。転職コスパを判定する基準は「年収が上がったか」ではなく「実質時給が上がったか」になる。


業種別の実質時給ランキング:どの業種に転職すれば時給が上がるか

結論:現実的な転職先では医薬品¥4,361・不動産¥4,076が上位。小売業との差は最大¥1,792/h

以下はTimeValueが算出した業界平均の実質時給から、主要業種を抜き出したものだ。持株会社と残業データの無い企業を除いた対象企業(1,399社)で集計し、対象企業が3社以上ある32業種で順位を付けている(データ最終更新2026年8月)。

順位 業種 対象企業数 平均実質時給 月残業時間 TEI
1 海運業 4社 ¥7,030 13.2h 184.0
3 医薬品 25社 ¥4,361 13.6h 102.3
4 不動産業 35社 ¥4,076 13.7h 103.8
5 建設業 78社 ¥4,013 20.4h 93.7
6 電気・ガス業 18社 ¥3,943 15.4h 92.5
7 証券、商品先物取引業 5社 ¥3,788 15.0h 90.7
8 卸売業 117社 ¥3,693 13.9h 88.1
20 銀行業 40社 ¥3,259 10.0h 80.7
22 情報・通信業 151社 ¥3,177 13.3h 83.5
24 保険業 5社 ¥3,155 11.2h 76.7
31 サービス業 146社 ¥2,793 17.4h 72.1
32 小売業 85社 ¥2,569 15.7h 62.1

海運業は¥7,030と突出しているが、残業データを開示している対象企業は4社だけだ。証券・保険も対象は5社ずつで、業界全体の姿とはずれる可能性がある。対象企業が20社以上ある業種で見ると、医薬品(¥4,361)と小売業(¥2,569)の差は時給で1,792円、年間2,000時間換算では約358万円になる。

上位業種の月残業は13〜14時間台で、全業種の中では中くらいだ。つまり時給が高い理由は残業の短さではなく、年収水準の高さにある。医薬品は特許と研究開発、不動産は保有資産、海運は船という大きな資本で稼ぐため、人数に対して利益が大きい。

一方で建設業は時給が5位と高いものの、残業は月20.4時間と長い。時給だけでなく、働く時間の長さもあわせて見ておきたい。


業種別「転換前後の時給変化」シミュレーション

結論:小売・サービス・IT業から医薬品・不動産へ移ると、時給は+¥900〜¥1,800上がる計算になる

今いる業種ごとに、主な転換先と時給の変化をまとめた。年間の差額は「時給差×2,000時間」の概算だ。海運業は参考値として載せている。

小売業(¥2,569)からの転換:

転換先業種 転換先時給 時給の変化 年間換算の差額(概算)
医薬品 ¥4,361 +¥1,792 +約358万円
不動産業 ¥4,076 +¥1,507 +約301万円
卸売業 ¥3,693 +¥1,124 +約225万円
(参考)海運業 ¥7,030 +¥4,461 +約892万円

サービス業(¥2,793)からの転換:

転換先業種 転換先時給 時給の変化 年間換算の差額(概算)
医薬品 ¥4,361 +¥1,568 +約314万円
不動産業 ¥4,076 +¥1,283 +約257万円
建設業 ¥4,013 +¥1,220 +約244万円
(参考)海運業 ¥7,030 +¥4,237 +約847万円

情報・通信業(¥3,177)からの転換:

転換先業種 転換先時給 時給の変化 年間換算の差額(概算)
医薬品 ¥4,361 +¥1,184 +約237万円
不動産業 ¥4,076 +¥899 +約180万円
卸売業 ¥3,693 +¥516 +約103万円
(参考)海運業 ¥7,030 +¥3,853 +約771万円

これはあくまで業界平均どうしの比較だ。個社の時給は業界平均から大きく外れることがある。情報・通信業の平均は¥3,177だが、ジャストシステムは¥6,211と約2倍だ。ただし同社の月残業は49.1時間と長く、電通総研(¥5,350・月12.2時間)のほうが働き方とのバランスは良い。

証券業も、平均¥3,788に対してジャパンインベストメントアドバイザーは¥4,579だ。業種で大まかに絞ったら、個社の実質時給ランキングで最後に確認しよう。


異業種転職で実質時給を上げる3つの確認ポイント

結論:「転職後の時給>今の時給」が最低条件。残業とTEIもあわせて確認する

1. 転職先の業種の実質時給が、今より高いか

上のランキングで転職先の平均実質時給を見て、今の業種の平均と比べる。差がプラスであることが、転職コスパが良くなる最低条件だ。

2. 残業時間が増えないか

建設業(月20.4時間)や陸運業(月21.4時間)は残業が長い。銀行業(月10.0時間)や保険業(月11.2時間)は短めだが、時給は中位にとどまる。高時給の医薬品・不動産は月13時間台で、今より残業が増えないかを個社の数字で確かめたい。

3. 20〜30代ならTEI(タイム効率指数)も見る

TEIは実質時給を平均年齢で割ったTimeValue独自の指標で、若いうちにどれだけ効率よく稼げるかを表す。海運(184.0)・不動産(103.8)・医薬品(102.3)はTEIも上位だ。20〜30代の転職では、時給の高さに加えてTEIが上がる転職先を優先しよう。


まとめ:異業種転職の実質時給チェックリスト

異業種転職でコスパを最大化するには、次の3ステップを踏む。

  1. 今の実質時給を知る: 年収 ÷(月所定労働時間×12 + 月残業×1.25×12)で自分の時給を計算する。
  2. 転職先の業種の実質時給・残業・TEIを確認する: TimeValueの時給ランキングで業種を絞り、個社の数字を確かめる。
  3. 差を年間の金額に直す: (転職後の時給 − 今の時給)× 年間労働時間 = 年間の差額。転職の手間やリスクに見合うかを判断する。
確認軸 確認方法 コスパが良くなる目安
実質時給 TimeValueランキング 転職先>今の業種
月間残業 有価証券報告書(EDINET) 転職先 ≦ 今の業種
TEI(30代以下) TimeValueランキング 転職先>今の業種

「年収が上がった」満足と「実質時給が上がった」コスパは別物だ。業界別の実質時給とTEIを転職判断に組み込めば、長い目で見たキャリアのコスパが大きく変わる。就職活動中の方は新卒向けの時給ランキングも参考にしてほしい。

あわせて読みたい:転職コスパを「TEI」で測る方法、転職の年収交渉タイミングと金額の正解。

注:実質時給は「年収 ÷(月所定労働時間×12 + 月平均残業時間×1.25×12)」で算出。業界平均の実質時給・月間残業時間・TEIは、上場4,026社のEDINET開示データ(2026年8月更新)のうち、持株会社と残業データの無い企業を除いた対象企業1,399社で集計したTimeValueの推計値。年間換算の差額は時給差×2,000時間の概算で、個人の労働時間によって変わる。

【2026年10月2日更新】業界平均を対象企業で集計し直し、数値を最新データに差し替えた。あわせて、冒頭で引用していた調査の数値と公表日を一次ソースで確認し、修正した。

よくある質問

Q. 転職すると年収はどれくらい上がりますか?
マイナビ「転職動向調査2026年版」(2026年3月23日公表)では、2025年に転職した正社員の転職後の平均年収は533.7万円で、転職前(514.5万円)より19.2万円増えています。2025年の転職率は7.6%で、調査開始以降最高でした。ただし年収が増えても残業が増えれば実質時給は下がります。転職の損得は「実質時給の差×年間労働時間」で判断するのがおすすめです。
Q. 小売・サービス業からの異業種転職で最も時給が上がる転換先はどこですか?
TimeValueの業界平均(2026年8月更新、持株会社・残業データなしを除く対象企業で集計)では、小売業(¥2,569)からは医薬品(¥4,361)で+¥1,792/h、不動産業(¥4,076)で+¥1,507/hです。サービス業(¥2,793)からは医薬品で+¥1,568/h、不動産業で+¥1,283/hになります。海運業(¥7,030)はさらに高いものの、対象企業が4社しかなく採用枠も限られます。
Q. IT・情報通信業から異業種転職で年収をアップさせるには?
情報・通信業の業界平均実質時給は¥3,177(対象企業3社以上の32業種中22位)です。医薬品への転換で+¥1,184/h、不動産業で+¥899/h、卸売業で+¥516/hの差があります。ただし情報・通信業の中にも電通総研¥5,350や三菱総合研究所¥5,283のように業界平均を大きく上回る会社があります。業種を変える前に、同じ業界内の高時給企業への転職も比べてみてください。
Q. 転職前に実質時給を自分で計算するにはどうすればよいですか?
計算式は「年収 ÷(月所定労働時間×12 + 月平均残業時間×1.25×12)」です。例えば年収600万円・月所定160時間・月残業10時間の場合、600万 ÷(160×12 + 10×1.25×12)= 600万 ÷ 2,070 ≈ ¥2,899/hとなります。転職先候補の数字も同じ式に当てはめ、差分が年間何万円になるかを確認してください。TimeValueのランキング(/#ranking)では個社の実質時給を確認できます。

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